看護師を辞めたいと思う瞬間|現役6年目のリアルと、私なりの答え

「看護師 辞めたい」。この5文字を、私は何回検索したか分かりません。夜勤明けの布団の中でも、帰りの車を降りられずにいるときも、結局同じ言葉を打ち込んでいました。

急性期の病棟で6年目、来年の3月で退職します。決めてから振り返ってみると、「もう無理だ」と思った瞬間には、はっきりした共通点がありました。

この記事では、私が実際にそう思った瞬間を、格好つけずにそのまま書き出します。そのうえで、それを3つに分けて考えた私なりの答えと、辞めたいと思った日にできることをまとめます。

「もう無理」と思った瞬間を、全部書き出してみた

順番も脈絡もありません。思い出した順に書いていきます。

人に削られた瞬間

お局に理不尽に怒られたとき。業務の話なら聞けます。でも、その日の機嫌が理由だと、こちらには直せるところが一つもありません。

日勤も夜勤も、お局とシフトが被ったとき。勤務表が出た瞬間に気が重くなります。特に夜勤は3人で回すので、逃げ場がありません。仮眠の順番から記録の書き方まで気を遣ったまま、朝を迎えることになります。

当直で、評判の悪い医師に急変を報告しなければいけないとき。患者さんの状態より先に、「どう言えば怒られないか」を考えている自分に気づいて、いやになりました。

  • 私

    (血圧下がってる、報告しなきゃ。……でも今、あの先生だ)

  • 私

    (先に何を聞かれる? 尿量は? いつからって聞かれる……)

報告のためではなく、怒られないための準備に頭を使っている。この時間はいったい誰のためなんだろう、と思いました。

不穏の患者さんに引っ掻かれたり、殴られたりしたとき。病気のせいだと頭では分かっています。分かっていても、腕に残った傷を見ると心は削れます。

手が足りなくなった瞬間

夜勤の挨拶に行った時点で、シーツも寝衣もびしょ濡れだったとき。まだ勤務が始まってもいないのに、これから朝までの流れが全部見えてしまいます。

18時に、点滴の処方が出ていないと気づいたとき。当直医を捕まえるところから始まります。自分のミスではないのに、時間だけが減っていきます。

ナースコールを一晩中連打する患者さんを受け持ったとき。行くたびに用件は違って、そのどれも緊急ではない。それでも「行かない」という選択肢はありません。「次に鳴ったのが本当の急変だったら」と考えてしまうからです。別の部屋の記録が止まったまま、ナースコールの音だけが増えていきます。

OPE迎え、ナースコール、急変、搬送、そして転倒が同じ時間に来たとき。体は一つしかないのに、優先順位を間違えたら人の命に関わる。あの数分間の感覚は、何年経っても慣れませんでした。

リーダーをして、病棟が回らなかったとき。あとから思えば人数の問題でした。でもその日は、「私の判断が遅かったからだ」としか思えませんでした。

割に合わないと感じた瞬間

サービス残業をしたとき。記録も申し送りも終わらないまま定時を過ぎて、それでも残業をつけられない日がありました。

  • 師長

    今月はこれ以上、超過勤務をつけられないから。

  • 私

    ……はい、分かりました。

その瞬間、記録に残っていた私の1時間は、なかったことになりました。定時で終わる量の業務ではないのに、定時で終わったことにする。この矛盾に慣れていく自分が、いちばん怖かったです。

責任の重さと給料が見合っていないと感じたとき。人の命を預かる緊張感は、給与明細のどこにも書かれていません。

気づいたら、同期が私だけになっていたとき。歓迎会で並んでいた顔が一人ずつ減って、最後に残ったのが自分でした。残ったから偉いわけでもないのに、なんとなく取り残されたような気持ちになりました。

「辞めたい」と思った瞬間を、人に削られる・手が足りない・割に合わないの3つに分類した図解
書き出してみたら、瞬間はきれいに3つに分かれました

書き出して分かった、「辞めたい」の正体

並べてみて気づいたのは、どれも性質が違うということでした。

人に削られる系は、相手が変われば消えます。異動や転職で環境が変われば、少なくとも同じ人には怒られません。

手が足りない系は、人員配置と体制の問題です。私の要領が悪いからではありませんでした。3人夜勤で同時に4つ起きたら、誰がやっても回りません。

割に合わない系は、制度と評価の問題です。個人の頑張りでは1円も動きません。

つまり3つとも、「私がもう少し我慢すれば解決する」ように見えて、実際は私ひとりではどうにもならないものでした。だから、どれだけ頑張っても減らなかったんだと思います。

これに気づいてから、辞めたいと思う自分を責めるのをやめました。

それでも6年、辞めなかった理由

ここまで書いておいて何ですが、私はこの仕事が嫌いになったわけではありません。

状態が悪かった患者さんが、自分の足で退院していく日。ご家族に「ありがとう」と言ってもらえた日。後輩が、去年の私にはできなかった処置を一人でやり切っている日。そういう瞬間も、たしかにありました。

辞めたい気持ちと、続けたい気持ちは同時に存在します。どちらかだけが本当の気持ち、ということはありません。だから「やりがいはあるんだから頑張れる」も、「こんなに辛いんだから今すぐ辞めるべき」も、どちらも雑な結論だと思っています。

私の場合は、辞めたい瞬間だけが年々増えていって、ある日つり合わなくなりました。それが6年目でした。

6年目の私なりの答え

私は来年の3月で辞めます。決定的な事件があったわけではありません。上に書いた瞬間が、6年分たまった結果です。

ただ、「辞めたい」と思った日にすぐ辞めなければいけない、とは思っていません。私も1年目から辞めたいと言っていて、実際に辞めるのは6年目です。

そのうえで、しんどかった時期の自分に一つだけ伝えられるとしたら、「今すぐ辞めなくていいから、選択肢だけは知っておきなよ」ということです。

3年目の私は、日勤のみで働ける職場がどれくらいあるのかも、自分の経験年数でどこまで選べるのかも、何ひとつ知りませんでした。だから「辞めたい」以外の言葉が出てこなかったし、引き止められたときに一言も返せませんでした。しんどさの正体が分からないと、人は動けません。

(実際に「辞めたい」と切り出したときのやりとりは、退職を切り出したとき、看護師の私が実際に言われたことにまとめています。)

辞めたいと思った日にできる、書き出す・分ける・調べる・決めるの4ステップを示した図解
辞めるかどうかを決めるのは、いちばん最後で大丈夫です

今、同じ瞬間の中にいる人へ

覚えておいてほしいのは、求人を見ることと、辞めることは別だということです。見ただけでは何も始まりませんし、今の職場に伝わることもありません。

それでも、「日勤のみでこの条件の求人があるんだ」と知っているかどうかで、次に理不尽なことを言われたときの立ち方が変わります。私の場合は、そこが変わってから、ようやく落ち着いて退職の話ができるようになりました。

※ 登録しても、すぐに転職する必要はありません。条件を見て「こういう働き方もあるんだ」と知っておくだけでも十分です。

まとめ

  • 辞めたいと思った瞬間は、①人に削られる ②手が足りない ③割に合わない、の3つに分かれた
  • 3つとも、自分ひとりが我慢しても減らないものだった
  • だから「辞めたいと思う自分」を責める必要はない
  • やることは、書き出す→分ける→調べる→決める、の順番でいい
  • 求人を見ることと辞めることは別。知っておくだけで、次に言い返せる自分になれる

今日もお疲れさまでした。まずは、ちゃんと寝てください。