プリセプター・リーダー業務がしんどい。中堅看護師の消耗ポイント

「しんどい」の中身が、3年目までとは明らかに変わりました。

1年目から3年目までは、しんどさの原因が自分にありました。手が遅い、判断に自信がない、先輩に聞くのが怖い。できない自分がしんどかった。

でも中堅になってからのしんどさは違います。手はもう動くようになった。動くようになったからこそ、自分以外のことまで背負わされるようになりました。

私は急性期病棟で6年働いて、来年の3月で退職します。リーダーもプリセプターも一通りやってきました。この記事では、中堅がどこで消耗するのかを、自分の体験ベースで整理します。読み終わるころには、「私のやり方が悪いのかも」という感覚が、少し違って見えるはずです。

リーダーになって増えたのは、業務量より「見る範囲」

リーダーを初めて任されたとき、増えるのは業務量だと思っていました。実際に増えたのは、見なければいけない範囲のほうでした。

病棟の患者さん全員を、頭に入れておかないといけない

メンバーのときは、自分の受け持ちを回せばよかった。7人なら7人分の情報を持っていれば、その日は成立しました。

リーダーはそうはいきません。病棟にいる患者さん全員の状態を、ある程度把握していることが前提になります。誰がいつ検査に出るのか、誰の点滴がいつ切れるのか、誰が今日いちばん急変しそうなのか。

しかも、情報収集にもらえる時間はメンバーのときと同じです。範囲だけが増えて、時間は増えない。始業前に来る人が多いのは、たぶんこれが理由です。私もリーダーの日は、いつもより30分早く病棟に入っていました。その30分は、当然どこにも記録されません。

メンバーが今どこで何をしているかを、常に追いかけている

リーダーの仕事で意外としんどいのが、これです。

誰の手が空いていて、誰が詰まっているのか。遅れている人がいたら、他の人に振り直すのか、自分が拾うのか。入院が入りそうなら、誰に持ってもらうのが自然か。

つまり、自分の業務のタイムテーブルとは別に、病棟全体のタイムテーブルをもう一つ頭の中で回している状態です。手は動いていなくても、頭はずっと動いている。夜勤明けにどっと来る疲れは、たぶんここから来ています。

相談される側になったのに、自分もまだ相談したい

いちばん戸惑ったのは、立場の切り替わり方でした。

  • 後輩

    ◯◯さん、血圧がだんだん下がってきてるんですけど、どうしたらいいですか?

  • 私

    (……正直、私も自信ない)いったん一緒に見に行こうか。

つい最近まで、私が先輩にこう聞いていました。それが、ある日から聞かれる側になります。

答えられないわけではありません。でも「これで合っているのか」を確認したい気持ちは、まだ普通にあります。自分の不安を置いたまま、人の不安に先に答えないといけない。この順番が、地味に効いてきます。

しかも中堅になるほど、自分の判断を確認できる相手は減っていきます。聞ける先輩は日勤に固まっていて、夜勤帯にいるのは自分より下の人だけ、ということも普通にありました。

上と下、両方から愚痴が来る。中堅は挟まれている

経験年数が上がると、上の先輩から頼りにされるようになります。ありがたいことのはずなんですが、頼りにされるというのは、愚痴の受け皿にされることでもありました。

  • 先輩

    あの子、また記録残ってたよ。ちゃんと見てあげてるの?

  • 私

    すみません、声かけておきます。

  • 後輩

    ◯◯さん、なんであんな言い方するんですかね……。

  • 私

    ……うん、わかるよ。

後輩とも年が近いので、逆方向の愚痴も同じくらい聞きます。どちらにも「わかります」と言い、どちらの側にも立てない。

先輩に「あの言い方はきついと思います」と言えるほどの立場はないし、後輩に「先輩も悪気はないんだよ」と言えば、今度は話してくれなくなる。結局、どちらにも当たり障りのない返事をして終わります。

上の先輩と後輩の両方から相談と愚痴が集まる、中堅看護師の板挟み構造の図解
上からも下からも来る。中堅が「挟まれている」構造

そして、この時間は業務でもないし、記録にも残らないし、評価もされません。発生する場所も、ナースステーションを出たあとの廊下や更衣室だったりするので、勤務時間としてもカウントされません。

それなのに、退勤後にいちばん頭に残っているのは、この会話だったりします。

プリセプターで、いちばんしんどかったこと

プリセプターというと、技術指導のイメージがあると思います。私も、手技を見て、できるようになったらチェックをつけていく仕事だと思っていました。実際に時間を取られたのは、そこではありませんでした。

技術指導より、精神面のフォローに時間が溶ける

顔色を見て、声をかけて、泣いていたら話を聞く。1年目の子が潰れないように支えるのは、大事な役割だと思っています。私自身が1年目のときに支えてもらった記憶があるので、そこは手を抜きたくありませんでした。

ただ、この時間は業務時間の中に用意されていません。自分の受け持ちを回しながら、休憩時間や勤務のあとに削り出すことになります。指導の時間は、だいたい自分の休憩から出ていました。

1年目のミスが、「指導不足」として返ってくる

問題は、そのあとでした。

  • 先輩

    これ、あの子がやったの?プリセプター誰だっけ。

  • 私

    ……私です。

  • 先輩

    ちゃんと指導してあげないと。

1年目が何かやらかしたとき、結局は一緒になって怒られるのは私でした。自分がやったことではないのに、「指導不足」という形で返ってくる。これが本当にしんどかったです。

しかも、その場で本人を責める気にはなれません。落ち込んでいる子を前にして、指導者として怒られたばかりの自分が、もう一度同じことを言えるかというと言えない。結局ここでも板挟みでした。

これも当時ははっきり言葉にできませんでしたが、いま振り返ると理由は単純です。1年目が育つかどうかは、プリセプター1人の力ではどうにもならないから。夜勤の入り方、指導する先輩ごとの言い方の違い、そもそも人が足りているかどうか。個人の責任にできる範囲を、明らかに超えています。

それでも「プリセプター誰だっけ」で話が終わってしまうのは、責任の置き場所として、いちばん分かりやすいからだと思います。

中堅の消耗ポイントを整理すると

6年やってみて、消耗の正体は「忙しさ」ではなかったと思っています。増えているのは業務量というより、責任の種類でした。

中堅看護師の4つの消耗ポイントをまとめた図解
中堅看護師の4つの消耗ポイント

この4つに共通しているのは、自分の努力では減らせないということです。手が速くなっても、判断力が上がっても、後輩の愚痴は減りませんし、他人の失敗で怒られる構造も変わりません。

だから、しんどさが続いているのは能力不足のせいではありません。むしろ逆で、中堅が全部拾う前提で組まれている職場では、うまくやればやるほど、拾う量が増えていきます。頼りにされることと、負担が増えることが、同じ意味になってしまっている。

しんどさを減らすために、私がやってみたこと

とはいえ、まったく打つ手がなかったわけではありません。6年のあいだに試したことは、効いたものと効かなかったものが、はっきり分かれました。

効いたこと:抱えている量を、目に見える形にした

いちばん効果を感じたのは、自分が抱えているものを一度書き出して、師長との面談で見せたことです。

受け持ちの状況、リーダーに入る日数、プリセプターとしての面談、委員会。並べて見せたときに、はじめて「たしかに多いね」という話になりました。全部が解決したわけではありませんが、委員会をひとつ外してもらえました。

ポイントは、感情ではなく量の話にすることでした。しんどさは主観として受け取られますが、担当している数は事実として扱ってもらえます。

効かなかったこと:自分の効率を上げる

逆に、まったく効かなかったのが「自分がもっと早く動けばいい」という方向でした。

情報収集を早く終わらせても、その分だけ別の仕事が入ってきます。時間内に回せるようになると、今度は「あの人なら大丈夫」と、重い部屋やしんどい日の勤務が回ってくる。空いたところに、また何かが入ります。

自分の努力で空けた時間は、自分のためには残りませんでした。ここに気づいてから、「もっと頑張れば楽になる」という考え方はやめました。

辞める前に、比べる材料だけは持っておく

私は来年の3月で退職を決めましたが、決め手は「もう無理」ではありませんでした。他の職場のやり方を知ったことです。

教育担当が専任でいる病院、リーダーが受け持ちを持たない病院、プリセプター制ではなくチームで新人を見る病院。全部あります。同じ「急性期の中堅」でも、背負う量はまったく違います。

逆に言えば、いま自分が置かれている状況が普通なのかどうかは、外を見ないと一生わかりません。私は3年目のときにそれを知らなかったので、「どこに行っても同じだよ」と言われたときに、何も言い返せませんでした。

求人を見るのと、辞めるのは別の話です。見たことが職場に伝わることもありません。「教育担当が専任でいる職場は、実際にどれくらいあるのか」を知っておくだけで、次に何か言われたときの足腰が変わります。

※ 登録しても、すぐに転職する必要はありません。教育体制やリーダーの業務範囲を、条件として比べてみるだけでも十分です。

まとめ

  • リーダーで増えるのは業務量より「見る範囲」。病棟全員の情報とメンバーの進行状況を、常に頭で回し続けることになる
  • 相談される側になっても、自分の不安がなくなるわけではない。自分の不安を置いたまま人に答える順番がしんどい
  • 上の先輩からも後輩からも愚痴が集まる。記録にも評価にも残らないのに、いちばん消耗する
  • プリセプターの最大の負担は、1年目のミスが「指導不足」として自分に返ってくること
  • 効いたのは、抱えている量を書き出して見せること。効かなかったのは、自分の効率を上げること
  • この消耗は能力不足ではなく、中堅が全部拾う前提になっている職場の設計の問題

「私のやり方が悪いのかも」と思っている人ほど、たぶん拾いすぎています。まずは、比べる材料だけ持ってみてください。