急性期6年で得たもの・失ったもの。正直に全部書きます

急性期の病棟で6年働きました。来年の3月で辞めます。

辞めると決めてから、ふと考えるようになりました。この6年で、私は何を得て、何を失ったんだろう、と。

求人サイトに書いてあるような「急性期で身につくスキル」の話ではなく、実際に私の手元に残ったものと、明らかになくなったものを、いいほうも悪いほうも全部書きます。今まさに「続けるか、辞めるか」で止まっている人の材料になればうれしいです。

急性期6年で得たものと失ったものを対比した図
急性期6年で、手元に残ったものと、なくなったもの

急性期6年で得たもの

1. どこに行っても人と働ける、という自信

看護師は女性が多い職場です。そのうえ医師、リハビリ、薬剤師、MSWと、他職種と関わる場面も本当に多い。

1年目のころは、誰にどう話しかければいいのか分からなくて、それだけで消耗していました。今は、「この人はどこまで説明すれば動いてくれるか」「この場では何を言わないほうがいいか」が、だいたい分かります。

好かれるための技術、と言うと少しあざとく聞こえますが、要は人をよく観察する癖がついたということです。これは看護に限らず、どこの職場でも使えるものだと思っています。

2. 急変で、足が止まらなくなった

急性期にいれば、急変には何度も当たります。1年目のころは、アラームが鳴るたびに心臓が跳ねて、頭が真っ白になっていました。

何度も経験して、BLSやACLSの研修を受けて、「今ここで自分は何をすればいいか」が順番で出てくるようになりました。ちょっとやそっとのことでは、もう動じません。

これは急性期にいなければ身につかなかったと思います。数をこなさないと覚えられない種類のものだからです。

3. 内科も外科も、急性期から終末期まで見た

私がいたのは内科と外科の混合病棟でした。当時は「覚えることが2倍でしんどい」としか思っていませんでしたが、振り返るとかなり得をしています。

薬でコントロールしていく内科的な治療と、術前・術後で日ごとに状態が変わっていく外科的な看護。その両方を、同じ病棟で見てきました。さらに、治療のゴールが「治すこと」ではなくなった患者さんの最期にも関わってきました。

急性期から終末期まで一通り経験した、と言えるのは強いです。次の職場を選ぶときにも効いてくる部分だと思っています。

4. 夜勤専従の2年間と、生活の余裕

2年ほど夜勤専従をしていました。手取りは、日勤+夜勤で働く同期より月4〜5万ほど多かったです。年にすれば50万円以上の差になります。

おかげで、欲しいものを値段だけで諦めることはなくなりました。生活に余裕があるというのは、思っていたよりずっと精神に効きます。財布に余裕がないと、心にも余裕がなくなるのだと実感しました。

ただ、この4〜5万が何と引き換えだったのかは、記事の後半に書きます。

5. 鋼のメンタル

理不尽に怒られることも、正直ありました。自分に非がないことで責められて、それでも業務は止められないので、飲み込んで手を動かす。

その繰り返しで、打たれ強くはなりました。多少のことでは落ち込みません。

——ただ、これを「得たもの」の欄に入れていいのか、書きながら少し迷っています。次の章と、地続きの話だからです。

手元の資料を見ながら考えている看護師のイラスト

急性期6年で失ったもの

1. 人の死に、動じなくなった

1年目、初めて受け持った患者さんを見送ったとき、涙をこらえるのに必死でした。

6年目の今は、同じ場面でも手が止まりません。ご家族に声をかけて、必要な処置をして、次の業務に移ります。

それが「プロになった」ということなのか、それとも私が人として何かを失ったのか、正直まだ答えが出ていません。慣れなければ続けられない仕事だとは思います。でも、あのとき泣きそうになっていた自分を、ちょっと羨ましく思う日があります。

2. 体調のコントロール

学生時代は皆勤賞レベルでした。それが日勤と夜勤を繰り返すようになって、2年目あたりから月に1回は風邪をひくようになりました。

生活リズムが崩れると、こんなにあっさり体は言うことを聞かなくなるんだ、というのが正直な感想です。しかも看護師は、自分が休めば誰かが代わりに出ることになるので、多少の不調では休めません。それでまた長引く。この繰り返しでした。

3. 「休み」という概念

学生のころ、休みの日は出かける日でした。今は、寝る日です。

仕事の日は仕事、休みの日は寝るだけ。それを何年も続けていると、私は仕事をするために生きているんだっけ、という気持ちになってきます。

体力が回復しきらないまま次のシフトが来るので、出かける気力が残らない。派手ではないぶん、これが一番じわじわ効いてきました。

4. 肌

夜勤に入ると、1回につきニキビが2つくらい増えます。冗談ではなく、本当にそのくらいの規則性がありました。

学生時代はスキンケアで悩んだことなんてなかったのに、今は化粧品の値段だけが上がっています。夜勤の手当で、夜勤で荒れた肌のケア用品を買っている。書いていて少し笑ってしまいますが、笑いごとでもありません。

差し引きして、どうだったか

得たものと失ったものを並べてみて気づいたのは、この2つは性質がまったく違うということでした。

得たもの——コミュニケーション力、急変対応、内科と外科の知識、看取りの経験——は、私が病棟を出ても消えません。どこの職場にも、そのまま持っていけます。

失ったもの——体調、休日、肌、そしてたぶん感情の一部——は、そのほとんどが今の働き方が原因で失ったものです。裏を返せば、働き方を変えれば戻る可能性がある、ということでもあります。

6年やってよかったかと聞かれたら、よかったと答えます。ただ、「あと6年やるか」と聞かれたら、答えはノーです。だから私は辞めます。

得たものは次の職場に持っていける、失ったものは働き方を変えれば戻る可能性があることを示した図
スキルは持ち出せて、消耗は働き方で変えられる

3年目の自分に、いま言うなら

「今すぐ辞めろ」とは言いません。あの数年で得たものは本物だからです。

ただ、「今の働き方以外にどんな選択肢があるのか、見るだけは見ておきなよ」とは言います。

私が夜勤専従を選べたのも、そういう働き方があると知っていたからでした。知らない選択肢は、そもそも選べません。日勤のみの病棟、外来、クリニック、訪問看護、健診。今の経験年数で何が選べるのかを知っておくだけで、続けるにしても辞めるにしても、その判断が自分のものになります。

※ 登録しても、すぐに転職する必要はありません。「日勤のみだと給料はどれくらいになるのか」を知るだけでも、考える材料が1つ増えます。

まとめ

  • 得たもの:観察に基づくコミュニケーション力、急変時に足が止まらない対応力、内科・外科・終末期を一通り見た経験、夜勤専従による手取り+4〜5万と生活の余裕、打たれ強さ
  • 失ったもの:体調のコントロール、出かけられる休日、肌、そして人の死に動じなくなった感情の一部
  • 得たものは職場が変わっても持っていける。失ったものの多くは働き方が原因なので、働き方を変えれば戻る可能性がある
  • 6年やってよかった。でも、あと6年は続けない。だから来年3月で辞めます

辞めると決めていなくても大丈夫です。ただ、自分が何を差し出して何を受け取っているのかだけは、一度紙に書き出してみてください。私はそれをやって、ようやく決められました。